減価償却は借入金返済の原資
融資を受けて、新築の収益物件を購入しました。決算では減価償却費を計上していますが、本来出ていかない費用のはずなのに、手元に残っている実感がありません。実際には、どこにあるのでしょうか? という質問をいただきました。
この質問は、単純で素朴なようで、実はものすごく、奥深い意味があり、融資を担当している銀行員ですら、なかなか正確に理解できていない部分でもあります。
減価償却費というのは、法定耐用年数経過後に、もう一度同じように建て替えるために必要な資金を、得られた利益の中から一部を毎年蓄積することであり、税法上も損金として扱うことが認められているものです。
自己資金ですべて建てた場合には、本当にその資金が、金庫にそのまま残っている、あるいは定期積み立て等の預金としてしっかりと蓄積されてゆく、という可能性も考えられます。(※)
しかし、融資を受けて購入した場合には、実体として、そのようなお金はどこにもありません。ではどこに消えたのか、といえば、すべて借入金元本の返済にあてがわれて、なくなってしまうのです。
融資は利益の前借りである、ということの意味が、ここでよくわかるはずです。
融資を受けた場合には、法定耐用年数経過後にもう一度、建て直ししようとしても、残念ながら、手元に蓄積資金はなく、再び、銀行から融資を受けるしかない、という、悲しい現実に直面してしまいます。
以下は、ケーススタディです。
減価償却費の計上額が、年間の元本返済額よりも少なくて、少ない分よりも、現預金が足りない場合には、現預金がゼロとなり、一方で足りないだけ、代表者からの借入か金融機関からの借入が増えているはずです。建物は減価償却費の計上分だけ、減価されています。資金繰りがタイト、借入金が減ったはずなのに、結局また増えて、リバウンドしてしまった、という状態です。日本の中小企業の大多数が、業種を問わず、こういう状態の繰り返しを行なって、延命のために、銀行からの追加借入等に依存している状態です。
(※)減価償却費を他の用途で使ってしまったりで、違う資産勘定に化けてしまい手元に預金や定期預金等がない場合もあります。
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